花粉症
花粉症とはその名の通り、植物の花粉が原因となって強いアレルギー症状が引き起こされる疾患です。中でも春は一年のうち最も花粉が多く飛散する時期に重なるため、さまざまなアレルギー症状に悩まされる患者さんが急増します。春や秋など特定の時期になると強いアレルギー症状がみられる場合には季節性のものの関与が疑われますが、年間を通じて症状がみられる場合には通年性のアレルギーである可能性が高くなります。症状は鼻炎や肌のかゆみなど体のさまざまな場所に発生しやすいものですが、特に目に現れるものは「アレルギー性結膜炎」と呼ばれています。目のかゆみや充血が代表的ですが、早期に適切な治療を開始することができれば症状の出方を比較的和らげることが可能となります。
アレルギー性結膜炎による代表的な目の症状
- 目の激しいかゆみ
- 充血
- 涙が止まらない
- まぶたや目の周りの赤みや腫れ
- 目の中のゴロゴロとした異物感
- ひどい目やに
など
主な原因として考えられるもの
花粉は実は年中飛散しています。飛散する時期は植物の種類によって異なります。そのためご自身の症状がいつ強く現れやすいかによって、原因として考えられるものを推定することができます。
【主な花粉の飛散シーズン】
- スギ(2月~4月)
- ヒノキ(3月~4月)
- イネ科(5月~10月)
- ブタクサ(8月~9月)
- シラカンバ(3月~6月)
- ヨモギ(9月~10月)
- カナムグラ(8月~10月)
など
季節性の花粉以外にも、ほこりやダニ、ペットの毛などによってアレルギー性結膜炎が引き起こされることが多くあります。また、コンタクトレンズの汚れなどは結膜炎を直接的に引き起こす原因となりやすく、レンズの清潔な管理も非常に重要な課題となります。
花粉症が起きるメカニズム
私たち人間の体には、もともと外から侵入してくる細菌やウイルスといった異物に対して攻撃し排除しようとする防衛機能が備わっています。この働きを「免疫」と呼びますが、免疫反応が起きると組織内に炎症が起こり、結果としてさまざまな症状が現れるようになります。アレルギーも元を正せばこの免疫反応のひとつにあたりますが、異物に対して過剰なまでの攻撃や排除を促してしまうのが特徴的で、そのため目のかゆみも通常より激しく、目が真っ赤に腫れあがるなどといった不快な問題へとつながりやすくなってしまいます。特に眼球を守る結膜部分では、花粉やほこりなど異物が溜まりやすい構造となるためトラブルを生じやすく注意が必要となります。
自己判断による誤ったケアはさらに重症化を招く危険も―
目は体の中でも非常にデリケートな部位となります。かゆみや痛みを無理に我慢し続けたり、自己判断で誤ったケアをするとさらに状態を悪化させてしまう可能性が高くなるうえに、眼球そのものを傷つける危険があります。例えばまぶたの裏側に白く隆起したブツブツができると角膜を傷つけやすくなるなど、さらなる深刻な事態へと発展しやすくなります。早期に症状を抑え込むためにも、目に異常を感じたらまずはご受診ください。
コンタクトレンズの使用について
コンタクトレンズを使用されている方にとっては、花粉症シーズンは特にレンズの清潔な維持管理が求められます。花粉や汚れがレンズに直接付着しやすくなるため、結膜炎などのさまざまなトラブルが発生しやすい環境となります。1Dayタイプの使い切りコンタクトレンズは、花粉シーズンはより衛生的でおすすめです。さらに点眼薬の使用はもちろんのこと、体の内部からアレルギー症状を静めるような内服薬などを適宜併用しながらご自身の症状とうまくつきあうことが基本となります。症状が特に激しい場合には一時的にコンタクトレンズの使用を控え、メガネに切り替える対策もトラブルを防ぐためには有効です。すでに充血や結膜炎などの症状がみられる場合には、すみやかにコンタクトレンズの使用を中止し当院までご受診ください。
当院の治療方針
アレルギー性結膜炎の診断については所見をもとに行います。当院では点眼薬による治療やアレルギー症状を抑えるための内服薬などの処方も必要に応じて行っております。早期の症状の緩和や改善を治療の基本方針といたしており、花粉が本格飛散を始める約2週間くらい前からの治療開始を推奨いたしております。詳しい内容については医師までご相談ください。
点眼薬を用いた治療
症状の程度や病態によって、以下の点眼薬を組みあわせて治療します。
- 抗アレルギー剤
かゆみの原因であるヒスタミンの発生を予防します。
- 抗ヒスタミン剤
ヒスタミンの活動を抑制させる効果があります。
- ステロイド剤
主に症状が激しい場合に使用します。使用にあたっては点眼回数など、必ず医師の指示に従って正しくご使用ください。
内服薬を併用した治療
アレルギー症状の発生自体を深部から抑え込みます。
花粉を取り込まないために有効な対策
点眼薬や内服薬を用いた治療以外にも、アレルギー症状を引き起こす花粉を体内に取り込まないためにできる工夫があります。
ゴーグルやマスクの着用
外出時には花粉の吸い込みや目への付着を物理的に防ぐ専用ゴーグルやマスク、帽子の着用などによる防御が有効です。
花粉を外から持ち込まない習慣づけを
自宅に帰る際には玄関の外で服についた花粉をしっかりと払い落としてから室内に入るように習慣づけましょう。上着は花粉のつきにくい表面がつるつるとした凹凸の少ない素材を選ぶのがポイントです。
洗顔や室内のこまめな掃除で花粉を徹底除去
目の周りについた花粉を洗い落とす洗顔や目の洗浄は症状を落ち着かせるためにとても有効です。室内に入り込んだ花粉は人の動きによって舞い上がりやすくなるため、こまめな拭き掃除による除去も効果的です。
花粉症に似た症状がみられる疾患も多く存在します
目に何らかの違和感がある場合にはまずは早期にご受診ください
繰り返しになりますが、目は非常にデリケートです。激しいかゆみから強く目をかきむしってしまうと粘膜部分や眼球そのものを傷つける恐れがあるだけでなく、感染症や視力低下などさらなる深刻な事態へと発展する危険性が高まります。また、ご本人にとっては花粉症だと思い込んでいた症状が、実はまったく別の疾患であったということも実際の診療現場においてはよくみられる事例です。誤ったケアや自己判断によって症状を悪化させてしまう前に、目に何らかの異常を感じられたらまずはすみやかにご受診いただければと思います。